教育
2021年00月00日
「公立高校の学費は、私立より負担が少ないだろう」と大まかなイメージを持っている人がほとんどでしょう。そこで今回は、実際に公立高校ではどれくらいの学費がかかるのか解説します。さらに、費用の準備方法もまとめたのでぜひ参考にしてみてください。
公立高校へ進学した場合、学費はいくらかかるのでしょうか。ここからは、文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」をもとに数値を紹介します。[注1]
いわゆる「学費」とは文部科学省における「学習費」のことであり、保護者が子供の学校教育や学校外活動のために支出した費用を指します。ここからは、「学習費」=「学費」として説明していきます。
公立高校の1年間の学費総額は457,380円で、3年間の総額は1,372,140円です。なお、公立高校の学費総額は、前回(平成28年)調査とほぼ同等の数値で、平均的に横ばいで推移しています。
では、この学費総額の内訳をみていきましょう。
公立高校の1年間の学校教育費は、280,487円です。3年間の総額は841,461円となります。
文部科学省の調査による学校教育費は、以下のように定義づけられています。
「学校教育のために各家庭が支出した全経費で、学校が一律に徴収する経費(学校調査)及び必要に応じて各家庭が支出する経費(保護者調査)の合計」
また、学校教育費には以下の項目があるのでおさえておきましょう。
学校教育費に含まれる項目名
公立学校の1年間の学校外活動費は、176,893円です。3年間の総額は530,679円となります。
学校外活動費は、「補助学習費及びその他の学校外活動費の合計」です。学校外活動費には次の項目があります。
学校外活動費に含まれる項目
文部科学省「平成30年度 子供の学習費調査の結果について」を参照し、私立高校の学費等に関するデータを紹介します。[注1]
私立高校の学費総額は、1年間で969,911円です。3年間の総額は、2,909,733円となります。この金額は前回の調査時から6.8%減となっており、同調査では授業料や補助学習費(自宅学習や学習塾、家庭教師などの費用)が減少したことによるものです。
また、公立高校と比較すると、私立高校の方が1,537,593円上回っています。
私立高校の学校教育費は、1年間で719,051円です。3年間では2,157,153円となります。また、公立高校の3年間総額より、私立高校の方が1,315,692円上回っている結果もでています。
私立高校の学校外活動費は、1年間で250,860円です。3年間の総額は752,580円となります。また、公立高校の3年間の総額より、私立高校の方が221,901円上回っている結果がでています。
ここまで、公立高校の学費など教育費に関する調査結果から具体的な金額を紹介してきました。あくまで目安となる平均であり、必ずしも近い数字になるとは限りません。そのため、あらかじめ少し多く準備しておくと安心でしょう。
また、公立高校のなかでも進学校なのか、商業や工業、農業高校など専門的な分野を学ぶ学校なのかによって発生する費用は異なります。あらゆる場面を想定し、平均的な目安の金額を中心にそれよりも多く出費があるかもしれないと準備しておきましょう。
小学校や中学校の義務教育と異なり、高校では給食がありません。そのため、昼食代も別途かかります。
公立高校への進学は、一般的に私立高校よりもお金がかからない印象です。しかし、公立高校であっても、寮費のかかる運動部へ所属する場合などは費用がかさむことも多いでしょう。また、文化部でも実習費などが発生する部活であれば、家計への影響が考えられます。
公立高校の受験料は、全国一律で2,200円です(一部の県では2,100円)。そのため、公立高校だけを受験すると考えると、大きな負担にはなりにくいでしょう。しかし、一般的には公立高校以外にも私立高校を受験することも多いですよね。
私立高校は学校独自に受験料を設定できるため、公立高校より受験料が高めです。文部科学省の「令和3年度私立高等学校初年度授業料等の調査結果について」をみると、受験料自体の平均は16,374円となっていますが[注2]受験する高校が遠方の場合は追加で交通費や旅費の準備も必要です。さらに、複数の高校を受験する場合にはその分の受験料や旅費等が発生します。
公立高校を受験するために、中学校から塾へ通わせる場合には塾代もかかります。特に、塾の費用は学年が進むごとに月謝が高くなる仕組みがほとんどです。
もっとも塾に通わせたい高校入試直前期にあたっては、人気の塾は定員オーバーで申し込みできないことも。そのため、直前期よりも前から入塾するケースが多いでしょう。塾へ通わない場合でも、家庭教師への依頼や、オンライン学習ツールの活用などお金がかかることが想定されます。
教育関連費とは少し異なりますが、子どもの成長の度合いに応じて身の回り品にお金がかかったり、お小遣いが高額になる場合もあります。子どもに関するお金全体として考えると、子どもが大きくなるにつれて教育費以外にも出費が増えていく印象です。
ここまでは、公立高校でかかる費用の目安について解説していきました。そこでここからは、目安の金額を参考に費用の準備方法について紹介します。少額ずつでもよいので、なるべく早期に費用の準備を始めましょう。
現在、すでに子どものための貯蓄がしっかりできている人は良いですが、うまくいかない状況の場合はまず家計改善に着手する方法がおすすめです。
家計改善の第一段階としては、固定費の見直しや削減です。固定費とは、通信費や水道光熱費、住居費、生命保険料などのことで、毎月ほぼ一定金額の出費があるものをさします。一方、変動費は毎月の出費ではないお金や、毎月変動が大きい出費のことです。たとえば、食費などが含まれます。
毎月発生する固定費の見直しをすると、そのあとも見直し後の金額で継続できるため、節約の効果を継続できます。たとえば、電気とガスを同じ会社にして、セット割引を活用すれば、固定費の見直しにつながるかもしれません。
各電力会社やガス会社等のWebサイトでは、現在の料金と見直し後の予定料金の比較シミュレーションが可能な場合があります。無料なので、一度シミュレーションしてみるとよいでしょう。
児童手当は、0歳から満15歳に達した最初の3月31日まで、子どもを対象として給付されます。すべての期間中の児童手当を貯蓄した場合、その総額は約200万円となります。
満15歳といえば、ちょうど高校入学頃の年齢であり、児童手当を貯めておくことで十分に高校入学時の資金にできます。
家計の中から別途子どものための資金が捻出しにくい場合などは、給付される児童手当をなるべく貯蓄していく方法も検討できるでしょう。
なお、児童手当には所得制限が設けられているため、高所得世帯では児童手当がもらえない(または減額)されることがある点は注意が必要です。
銀行で「お金を貯める」方法は、普通預金口座の活用だけではありません。もちろん、普通預金口座でもお金は貯まります。しかし、子どもの教育資金など目的をもって貯めていくには、より便利な商品があります。
北陸銀行の主な貯蓄性商品は次の通りです。
北陸銀行・貯蓄性商品
定期預金は、一定の期間を決めて預け入れをする商品で、普通預金よりも金利が良いことがポイントです。何年後にいくら必要か明確であれば、定期預金がおすすめでしょう。
北陸銀行では、1円から可能なスーパー定期預金から、300万円以上の預け入れができるスーパー定期300、1,000万円以上の大口定期預金があります。
積立預金は、毎月設定した金額を自動的に積立できる貯蓄性商品です。北陸銀行でも積立定期預金を取り扱っています。
生命保険のうち、学資保険は子どもの将来の資金に備える商品です。学資保険の仕組みは、毎月保険料を積み立てていくことで、あらかじめ設定した満期時にまとまった資金として受け取れるというものです。
また、満期時の受け取りに加えて、成長の節目にお祝い金が受け取れる商品もあります。
学資保険の特徴は、子どものための確実な積立というだけではない点です。学資保険には、契約者保険料払免除特約が付加されているものも多いので安心でしょう。契約者保険料払込免除特約は、学資保険における契約者(一般的には親のいずれか)が死亡または高度障害状態となった場合、以降の保険料は不要になる特約です。
保険料が免除された後の学資保険は、当初の契約通り有効に継続されます。つまり、学資保険では親が死亡した場合でも、満期金や節目のお祝い金などを確実に残せることになります。貯蓄とは少し違う性質ですが、万が一のことも想定すると学資保険の活用もひとつの方法でしょう。
定期預金や学資保険の他にも、子どものために捻出できる余力があれば積立投資信託の運用も効果があります。
積立投資信託とは、毎月決まった金額の投資信託を購入する仕組みです。長期的に積み立て購入することで、ドルコスト平均法の効果により運用結果が安定します。
たとえば米国株式の組み入れがある商品を積立購入する場合、価格が高い時には買える量が少なく、価格が低い時には多く購入できます。したがって、積立投資を長期間継続することで、購入価格を平均的に抑えることができます。
北陸銀行の積立投資信託では、月々5,000円(インターネットバンキングでつみたてNISAをご利用の場合は月々1,000円)から購入が可能です。口座から自動引き落としで購入できるため、ドルコスト平均法の効果を発揮できます。少しでも増やしながら将来の子ども資金に備えたい場合にはおすすめの方法です。
公立高校の資金として、奨学金を利用する方法もおすすめです。特に、公立高校を対象とした「高校生等奨学給付金制度」が活用できます。高校生等奨学給付金は非課税世帯などが対象で、奨学金により教育資金が足りなくても進学を諦めなくて良いように設けられた制度です。
この給付金制度では、授業料以外の教育費負担の軽減を目的としており、世帯の状況に応じて給付金額は異なります。なお、高校生等奨学給付金制度は一般的な奨学金ではなく、給付されるお金であるため返済は不要です。
また、生徒一人あたりの給付額は以下のように設定されています。
高校生等奨学給付金制度で受けられる金額(令和4年度年額、国公立の場合)
高校生等就学給付金制度は授業料以外のお金を支援するのに対し、高等学校等就学支援金は授業料の一部または全額の負担を軽減する制度です。こちらも一般的な奨学金と異なり、返済しなくてよいお金です。
対象となるのは高校生の子どもを持つ世帯で、公立高校だけでなく私立や定時制高校も対象となります。あわせて、年収が目安として約910万円以下であることが前提条件となっています。この金額以下であれば多くの世帯が実質授業料無料の対象となることが推察されます。
なお、公立高校の場合は、年間118,800円を上限に支給されます。
奨学金だけではなく、必要に応じて教育ローンの利用も検討しましょう。なお、北陸銀行では「学資ローン」という名称です。北陸銀行の学資ローンには2種類あり、必要なときに必要なお金を借りられるカードローンタイプと、一括でまとまった金額のお借り入れが可能なタイプがあります。
そのため、自身にとって利便性の高い商品を選んでくださいね。ご相談は、北陸銀行の窓口へお気軽におたずねください。
公立高校の入学から卒業までのお金は、公的なデータから平均の目安がわかります。一方、目安以外にも実際にはお金がかかるものですよね。そのため、子どもがいる世帯では、1日でも早く高校入学資金作りを始めることをおすすめします。
当記事を参考に預金や保険をうまく活用して、学費を貯めていきましょう。また、公立高校進学に関するお金に関するご相談は、北陸銀行の窓口までお気軽にお立ち寄りください。
◎著者
大野 翠(おおの みどり)
芙蓉宅建FPオフィス代表
金融業界歴12年目(2022年時点)。お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを行っています。一般消費者の金融に関する苦手意識を払拭すべく、ライフワークとして「超・初心者向けマネー勉強会」を毎月テーマを変えて開催しています。
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