教育
2021年00月00日
近年、大学への進学率は男女ともに増えています。子どもに必要な教育は受けさせたいと考える一方で、資金対策に悩む家庭も多いのが現状です。そこで当記事では、国立大学の学費や関連費用について紹介します。私立大学との費用の違いもまとめていますので、参考にして学費について考えてみましょう。
学費といえば、一般的に授業料のイメージが強いのではないでしょうか。しかし、実際には授業料以外にも入学時や在学中に発生する費用があります。
そこで、まずは国立大学へ進学する際にかかる費用について紹介していきます。
国立大学へ進学する際は、具体的に以下のような費用が必要となります。国立大学に入学したい場合は、あらかじめ以下の必要な費用をおさえておくと安心です。
国立大学への進学、通学で必要な費用
大学の学費や入学費用だけでなく、学用品に必要な資金や一人暮らし資金も早めに準備しておくと良いでしょう。
日本政策金融公庫が高校生以上の子供を持つ64歳以下の男女を対象に実施した「教育費負担の実態調査結果(2021年12月発表)」では、教育資金の捻出方法についてまとめられています。
教育資金の捻出方法
また、6位以下も5位までと類似の内容が集中しています。大まかに解説すると、「在学者本人や親が工夫して収入を増やす」「教育資金以外の出費を節約する」「教育資金の借り入れをする」という3つに分かれていました。[注1]
日本政策金融公庫による同調査のうち、「教育費以外の支出を削っている」と回答した方には具体的な節約方法を調査し、その結果も公表されています。
教育資金捻出のために節約している支出
6位以下には、親の小遣いや趣味娯楽費を節約する内容や、お中元お歳暮など交際費を減らすことがあげられていました。[注1]
これらの結果から、子どものための教育資金を捻出するためには、主に趣味や娯楽に関する支出を節約していることがわかります。
教育資金の準備には金融商品の活用も選択肢のひとつです。北陸銀行では、子どもの教育費を心強くサポートする商品を提供しています。たとえば、資産運用商品や学資ローンなどです。
特に学資ローンのカードローンタイプは必要なタイミングで必要な金額を借りることができるのも大きな魅力となっています。また借入金額もカードローンタイプは50万円から1,000万円、一括借入タイプは10万円から2,000万円と幅広く、家計状況に合わせた内容で検討することが可能です。
シミュレーションもホームページ内で可能となっていますので、活用して検討してみましょう。
国立大学は、文部科学省令により標準額が定められています。標準額として提示されているのは「入学料」「検定料」「授業料」の3つです。大学の入学金は、標準額のうち入学料にあたるのでおさえておきましょう。現行の文部科学省令では、入学料の標準額は282,000円とされています。[注2]
国立大学に入学する際、標準額を採用している大学であれば入学金として納めるのは282,000円です。しかし、入学時に必要なお金は大学へ納入する費用だけではありません。一般的には、教科書などの学用品費や通学に必要な衣服、身の回りの品の購入代金などが想定されます。また、親元を離れて進学する場合には引っ越し費用や当面の生活費、住居費なども必要です。
国立大学では標準額が決まっているものの、学部によって入学時に購入が必要なものに差があります。そのため、少しでも早い段階で教育資金の備えをしておきましょう。
国立大学の標準額として、検定料も文部科学省令によって定められています。検定料とは受験料のことで、標準額は17,000円です。[注2] 全国の国立大学いずれの受験でも標準額は同じですが、費用面として考えておきたいのは旅費です。居住地から離れた地域の大学を受験する場合には、現地までの往復の旅費と宿泊費用もかかります。
また受験に必要な大学入学共通テストの受験に18,000円(3教科以上受験の場合)が必要となりますので併せて考えておきましょう。
大学への入学時に発生する費用は初年度のみですが、授業料などは毎年必要です。ここからは、国立大学で入学金以外に発生する費用を解説していきます。
国立大学では、授業料も標準額が定められています。文部科学省令に基づく授業料の標準額は、1年間で535,800円です。一般の在学期間であれば4年分、医歯薬学部であれば6年分の授業料がかかります。[注2]
国立大学では、原則として設備費の納入はありません。一部の大学では、大学独自で納める必要がある場合もあります。しかし、後述する私立大学ほど高額ではない場合がほとんどです。なお、私立大学ではほとんどの場合で設備費の納入が必要なためこの部分は大きな違いです。
国立大学は文部科学省が授業料などの標準額を定めているため、学部によって大きな学費の差はありません。ここからは国立大学の入学費用と、卒業するまでにかかる4年間の授業料総額について解説します。
国立大学で入学時に必要な費用は、入学金と1年目の授業料です。いずれも、標準額に基づき定められています。
国立大学の入学金は282,000円、1年目の授業料は535,800円のため総額817,800円です。
文部科学省令による国立大学の標準額では、1年間の授業料は535,800円です。そのため、4年間在学すると授業料の総額は2,143,200円になります。
また、医歯薬学部では6年間在籍するため総額は3,214,800円です。
国立大学に入学する際に必要な入学金や授業料をすべて合計し、卒業までにかかる費用の総額を計算してみましょう。
国立大学・卒業までにかかる費用総額
入学金 | 在学期間中の授業料 | 総額 | |
---|---|---|---|
4年間在学 | 282,000円 | 2,143,200円 | 2,425,200円 |
6年間在学 | 282,000円 | 3,214,800円 | 3,496,800円 |
4年間在学 | 6年間在学 | |
---|---|---|
入学金 | 282,000円 | 282,000円 |
在学期間中の 授業料 |
2,143,200円 | 3,214,800円 |
総額 | 2,425,200円 | 3,496,800円 |
卒業までにかかる費用の総額は4年間在学した場合は2,425,200円、6年間在学した場合は3,496,800円となります。
先述したように、国立大学では授業料や主要な費用は全て標準額が定められています。そのため、国立大学であれば日本全国どこでも費用に大きな差はありません。また、学部による学費の差もないことが国立大学の特徴でしょう。
一方、私立大学の学費は、文系か理系かによって学費の平均に大きな差が生じます。「大学へ進学したいけど資金面が心配…」という場合、まずは国立大学を目指す選択肢がおすすめです。
公立大学は国公立大学と総称されることがありますが、国立大学は国が主体で公立大学は県や市町村が主体の大学です。
学費に関して、公立大学は県や市町村単位で若干異なりますが、授業料が国立大学の標準額と近い金額となっています。そのため、公立大学への進学・通学を検討している場合は、国立大学の学費を参考にしても良いでしょう。
また、公立大学では大学のある地域に住んでいる場合、他県からの入学よりも入学費用が安くなるケースがほとんどです。たとえば、公立のうち県立大学の入学を希望する際、その県内に居住している場合と他県から入学する場合では、入学費用が2倍前後違うこともあります。[注3]
上記の費用総額にもあるように、国立大学では卒業までに4年間で約243万円、6年間で約350万円の費用が必要です。これらはあくまでも入学金と授業料のみの総額となります。
そのため、在学期間中の実習費や教材費は、学部によって別途実費での清算が必要です。また、通学するための交通費や毎日の昼食代なども考慮しなければいけません。
学生本人が大学に通学しながらアルバイトできる場合、その分親の負担は減ります。しかし、勉学の多忙さなどの理由からアルバイトができない可能性もあります。そのため、大学入学前の早い段階から教育資金への備えを万全にしておきましょう。
日本学生支援機構による「令和2年度・学生生活調査結果」によると、大学(昼間部)に通う約8割の大学生がアルバイトをしていることがわかります。
そのうち、約6割の学生が「家庭からの給付のみで修学可能」と回答しています。残り4割の学生は「家庭からの給付のみでは修学不自由・困難および給付なし」という結果でした。
これらの結果からみると、アルバイトをしている学生のうち半数以上が、家庭から捻出される学費や生活費のみで大学へ通えていることがわかります。[注4]
これまでは国立大学の学費について解説しましたが、私立大学の学費はどのくらいなのでしょうか。そこでここからは、文部科学省による「令和3年度私立大学入学者に係る初年度学生納入金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」を基に、私立大学の学費について解説します。
私立大学では、国立大学では発生しない施設設備費の納付が必要です。施設設備費は、授業料と同様に在学期間中は毎年発生する費用となります。なお、施設設備費以外の費用として入学金や授業料は国立大学と共通しています。
以下が学部別の学費総額をまとめたものです。[注5]
私立大学の学部別・学費総額
学部 | 入学料 | 施設設備費 (在学期間の総額) |
1年間の授業料 (在学期間の総額) |
学費総額 |
---|---|---|---|---|
文科系学部 | 225,651円 | 148,272円 (593,088円) |
815,069円 (3,260,276円) |
4,079,015円 |
理科系学部 | 251,029円 | 179,159円 (716,636円) |
1,136,074円 (4,544,296円) |
5,511,961円 |
医歯系学部 (6年間) |
1,076,278円 | 931,367円 (5,588,202円) |
2,882,894円 (17,297,364円) |
23,961,844円 |
その他学部 | 254,836円 | 235,702円 (942,808円) |
969,074円 (3,876,296円) |
5,073,940円 |
学部 | 入学料 | 施設設備費 (在学期間の総額) |
1年間の授業料 (在学期間の総額) |
学費総額 |
---|---|---|---|---|
文科系学部 | 225,651円 | 148,272円 (593,088円) |
815,069円 (3,260,276円) |
4,079,015円 |
理科系学部 | 251,029円 | 179,159円 (716,636円) |
1,136,074円 (4,544,296円) |
5,511,961円 |
医歯系学部 (6年間) |
1,076,278円 | 931,367円 (5,588,202円) |
2,882,894円 (17,297,364円) |
23,961,844円 |
その他学部 | 254,836円 | 235,702円 (942,808円) |
969,074円 (3,876,296円) |
5,073,940円 |
国立大学と比較すると、私立大学は全ての学部で学費が高額です。私立大学の中で最も学費がかからない文系でも、4年間の学費は約400万円です。一方、国立大学は学部による差がなく学費も約243万円程度のため、私立文系との差は約157万円となります。
また、私立大学の中で最も高額な医歯系学部の学費総額は6年間で約2,396万円です。国立大学では医歯系学部の6年間の学費は約350万円であるため、私立大学と国立大学では約2,000万円という大きな学費の差になります。
これらのことから、私立大学の中でも特に医歯系学部への進学では、国立大学と資金面に大きな違いがあることがわかります。そのため、医歯系学部へ進学する場合は家族の要望など相談のうえで進路を決めると良いでしょう。
学費の総額は、大学へ入学してから卒業するまでの間に流動的に支払います。そのため、必ずしも4年間あるいは6年間の学費総額全てを大学入学前までに準備する必要はありません。
支払期日など詳細は大学によって異なりますが、入学金や1年目前期分の授業料の合計を初年度納付金として入学時に支払う大学が多いでしょう。また、私立大学の場合は、1年目の施設設備費も初年度納入金と同時に支払います。
1年目後期の授業料は後期の授業が始まるまでに納め、2年目以降も概ね同様のスケジュールでの納付です。学部によっては実習費や研修費、私立の場合は留学費用などが発生することもあり、その都度指定の期日までに納める必要があります。
ほとんどの場合は、あらかじめ納めるべき費用やスケジュールを大学ごとに提示されるので、大学指定のスケジュールに合わせて準備するようにしましょう。
国立大学の学費は、文部科学省令によって標準額が定められています。そのため、国立大学であればどの都道府県へ進学しても、基本的に学費に大きな差はありません。しかし、原則として国立大学では発生しない施設設備費がかかる場合や、学部によっては実習費や教材費が高額になることも想定されます。
今回紹介した国立大学の入学金や授業料を参考に、早めに教育資金を備えるようにしましょう。
◎著者
大野 翠(おおの みどり)
芙蓉宅建FPオフィス代表
金融業界歴12年目(2022年時点)。お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを行っています。一般消費者の金融に関する苦手意識を払拭すべく、ライフワークとして「超・初心者向けマネー勉強会」を毎月テーマを変えて開催しています。
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