老後へのそなえ
2021年00月00日
老後に向けた資産形成の方法として注目されているのが、さまざまな税制優遇を受けられる個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」です。iDeCoに加入すれば、積み立てたお金を老後に受け取れるので、老後の生活資金の上乗せに活用できます。では、iDeCoに加入することで、どの程度の節税が可能なのでしょうか。また、iDeCoの加入者は、月々に平均してどのくらいお金を積み立てているのでしょうか。この記事では、会社員・自営業の場合をそれぞれ想定し、iDeCoの節税効果について初心者にもわかりやすく紹介していきます。
iDeCoには、さまざまな税制メリットがあることを聞いたことのある方も多いでしょう。一般的な投資と比べて、iDeCoには具体的にどのような税制メリットがあるのでしょうか。ここでは、まずiDeCoの仕組みを説明したうえで、iDeCoを利用する税制上のメリットを紹介します。
iDeCoとは、毎月一定金額を積み立て(掛金の拠出といいます)、自身で金融商品を選択して掛金を運用し、60歳以降に受け取ることができる制度です。iDeCoの掛金の拠出はいつでも休止・再開できるため、無理のない範囲でお金を積み立てることができます。また、iDeCoに加入することで、加入者は「3つの税制メリット」を得ることができます。
iDeCoでは、「掛金を積み立てたとき」「積み立てたお金が増えたとき」「60歳以降にお金を受け取るとき」の3つの場合に、節税効果を得られるというメリットがあります。
「掛金を積み立てたとき」は、月々の掛金が全額所得控除の対象となります。これにより、所得税と住民税を軽減することができます。
また、「積み立てたお金が増えたとき」は、通常、運用によって発生した利益には20.315%の課税が発生しますが、iDeCoの場合はこれが非課税となりますので、大きな節税効果を期待することができます。
そして「60歳以降にお金を受け取るとき」も節税効果が見込めます。60歳以降にiDeCoで積み立てたお金を一時金として一括で受け取る方法と年金形式で受け取る2つの方法があります。このどちらにおいても、一時金の場合は退職所得控除が適用、年金の場合は公的年金等控除が適用されますので、節税の効果を得られるのです。
一般的な株式投資などでは、もちろん投資したお金に対する所得控除のメリットはありません。また、運用によって利益が発生した場合は、お金が増えたぶんだけ税金を納めなければなりません。しかし、iDeCoには3つも節税チャンスがあります。税制メリットを受けながら、老後の生活に備えたい方にとって、iDeCoはぴったりな制度といえるのです。
iDeCoに加入すると、原則65歳まで掛金を拠出できます。しかし、月々に拠出できるお金の上限額は、職業によって異なります。
つづいて、職業別に月々の掛金の平均を見てみましょう。以下の表は、2022年8月時点でのデータです。[注1]
毎月積み立てられる掛金は、職業によって変わります。これからiDeCoをはじめる方は、掛金の金額の目安にしてください。
ここまで、iDeCoの掛金の平均や上限額についてお話してきました。それでは、iDeCoに加入することで、どのくらいの節税効果があるのでしょうか。会社員(企業年金なし)、自営業のケースを想定し、iDeCoの節税額のシミュレーションを作成しました。
それでは、「掛金を積み立てたとき」「積み立てたお金が増えたとき」の節税額のシミュレーション結果(※)を見ていきましょう。
※以下のシミュレーション結果はあくまで試算であり、概算金額を示唆・保証するものではございません。
iDeCoの掛金は、全額所得控除の対象となります。「掛金を積み立てたとき」の節税額の目安は以下の通りです。
節税できる金額は、掛金や年収の金額によって変わります。しかし、60歳まで毎年所得控除できることを考えると、トータルでは非常に大きな節税額になります。たとえば、自営業(43歳、年収800万円、掛金6.8万円)の場合、トータルで4,577,760円もの節税が可能です。
ここまで、「掛金を積み立てたとき」の節税効果を解説しましたが、効果を得られない場合もあります。
例えば、専業主婦やパート主婦などです。年収が103万円以内の場合は、所得税を納めていないため、「掛金を積み立てたとき」の節税メリットをあまり受けることができません。
全ての方が「掛金を積み立てたとき」の節税メリットを受けられるという訳ではないので、注意をしましょう。
iDeCoでは、掛金の運用によって得られた利益も非課税です。運用利率3%で運用した場合、「積み立てたお金が増えたとき」の節税額の目安は以下の通りです。
会社員(企業年金なし)、自営業のいずれの場合も、トータルで数十万円の節税効果が得られるという結果となります。
iDeCoは節税効果が期待できるお得な制度ですが、いくつか注意点があります。ひとつは、拠出金額を割り込む「元本割れ」のリスクがある点です。また、iDeCoは原則として、60歳以降にならないとお金を受け取ることができない点もあげられます。
また、iDeCoは運用益に対する税金はかかりませんが、加入から受取が完了するまでの間、所定の手数料が発生する点も押さえておきましょう。
さらに、運用商品として投資信託を選択した場合は、別途信託報酬が発生するのも注意しましょう。
そして、月々の掛金を高く設定すると、生活を圧迫してしまう可能性もあります。生活費をのぞいた「余剰資金」を活用しながら、無理のない範囲でiDeCoを活用することが大切です。iDeCoの掛金の拠出は、いつでも休止・再開できますので、生活が苦しくならない範囲で老後に備えましょう。
個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は、加入することでさまざまな税制メリットを得られます。「掛金を積み立てたとき」「積み立てたお金が増えたとき」「60歳以降にお金を受け取るとき」の3つの節税効果があるため、税制メリットを受けながら老後の生活に備えることが可能です。iDeCoに積み立てるお金には、毎月上限額があります。職業によって、上限額が変わる点に注意しましょう。また、iDeCoに加入することで得られる節税効果も、職業・年収・掛金の金額などによって変動しますので、この記事で紹介したシミュレーションを参考にしてみてください。節税効果があるからといって、iDeCoの掛金を高くしすぎると、生活を圧迫してしまう可能性もあります。無理のない範囲で老後の生活に備えましょう。