資産運用
2021年00月00日
近年、新聞やテレビなどのメディアで「人生100年時代」という単語をよく見聞きするようになりました。
「人生100年時代」という言葉には、単純に寿命が延びているというだけでなく、ライフプランの立て方や働き方に大きな影響を及ぼす可能性がある、と示唆している一面があります。世界的に見ても長寿大国といわれる日本において、「人生100年時代」は決して他人事ではありません。
この記事では、人生100年時代の意味や概念を説明するとともに、人生100年時代に突入することで何が変わるのか、そしてお金について考えた時、どのように備えていくのが良いのかについて解説します。
出典)Human Mortality Database, University of Californiaをもとに株式会社ぱむにて作成
従来のライフプランでは「学ぶ」「働く」「引退する」という3つのステージが基本的な形でしたが、人生を100年という単位でとらえたとき、この基本が大きく変容する可能性があることを提示した言葉が「人生100年時代」です。つまり、寿命が延びた今、私たちは従来とは異なるライフプランニングをしなければならない、ということになります。
「人生100年時代」は、長寿化がもたらす働き方や生き方の変化を描いた著書『LIFE SHIFT』の作者であるリンダ・グラットン氏が提唱した言葉で、世界中で大きな話題を集めました。
同氏は、寿命が100年に延びていく社会では、「学ぶ」「働く」「引退する」の3つのステージのうち、どれか1つ、あるいは全ての期間を少しずつ延ばしていくという、単純な変化だけでは対応できないと指摘しています。
従来の「学ぶ」「働く」「引退する」という単純なライフステージの進み方ではなく、ステージを組み替えながら柔軟な生き方を模索する時代を迎えていることをリンダ・グラットン氏は強調しています。
『LIFE SHIFT』のなかでは「人生100年時代に見直しが必要になると語られているのは2つの資産である」と記載されています。1つは定年後に必要な「老後資産」、もう1つはマルチステージを生き抜くためのスキル・人間関係・健康などの「無形資産」であるとされています。特に無形資産を培うためには、個人だけの対応にとどまらず、政府の後押しもとても重要な要素となるようです。
日本も例外ではなく、「日本では、2007年に生まれた子どもの半数が107歳より長く生きる」という海外の研究結果を参考としたうえで、100年という長い期間をより充実したものにする取り組みを進めています。
実際、2017年9月には人生100年時代を見据えた経済社会システムを創るため、日本政府で「人生100年時代構想会議」が複数にわたって実施され、教育・仕事・老後という3ステージにとらわれず、多様な人生の再設計を可能とする社会を目指すための議論が行われています。
人生100年時代では、どのステージでもイキイキと輝く生活を送るために、従来のライフプランニングにとらわれない柔軟かつ多彩な生き方を模索する必要があります。
日本政府は人生100年時代構想会議において、年齢を問わずすべての国民に活躍の場を与えられるよう、さまざまな取り組みを行っています。
国の取り組みによって、人生100年時代には何がどう変わるのか、大きな変革を迎えるものを2つご紹介します。
多様な年代、または領域で活躍できる人材を育むためには、教育が必要不可欠です。
しかし、教育には多額のお金がかかるため、家庭によっては経済的な問題を理由に、子どもに満足な教育をさせてあげられなかったり、高等教育を断念せざるを得なかったりするケースが見られます。
また、日本では高等教育を終えた後は仕事に従事するケースが一般的で、就業後は新たな知識やスキルを学び直す機会から遠のいてしまいます。
そのため、20代までに育んだ知識・スキルのみで残り80年間の生き方を考えなければならず、選択肢が狭まる大きな原因となっています。
こうした教育の場の問題に対し、政府は幼児教育や高等教育の無償化、一人ひとりのライフステージに合わせて新たな知識・スキルを学び直すための「リカレント教育」の確立などを、人生100年時代の構想に盛り込んでいます。
教育の場が変化すれば、現役世代のキャリアアップはもちろん、中高年の再就職支援にもつながり、国が掲げる「誰もが活躍できる時代」の実現に近づくでしょう。
人のライフスタイルは年齢や家族構成と共に自然と変化していくものですが、働き方は変化が少ないため、結婚や妊娠・出産、子育て、介護を理由に離職するケースが後を絶ちません。
このような状況において政府は、一人ひとりが最適な環境で働けるよう、「一億総活躍社会」を目指し、働き方改革を推進しています。
働き方改革では、決まった場所や時間、雇用年齢などにとらわれず、すべての人が活躍する社会を実現するため、長時間労働の是正や高齢者の就労促進、子育て・介護の環境整備などに着手しています。
以上のように、日本でも個人のスキルを磨くためのインフラ整備や活躍できる場を整えようとする試みがなされています。当然、これらが全て実現できれば人生100年時代を安心して迎えられるというわけではありません。確実に変化していく社会に対して個人がしっかりと向き合っていくことが何より大切であるといえるのではないでしょうか。
出典)「家計調査年報(2019)」(総務省統計局)https://www.stat.go.jp/data/kakei/npsf.htmlをもとに株式会社ぱむにて作成
人生100年時代において変えていかなければならないのは、スキル・人間関係・健康などの無形資産だけではなく、老後資産についても考えていかなければなりません。
平均寿命が延びれば、当然生きるために必要なお金も増えます。2019年時点では、日本の平均寿命は男性が81.41歳、女性は87.45歳とされていますが、この状況下でも高齢化社会として問題を抱えているうえに、更に10年以上も伸びる可能性があるということになります。人生100年時代を生き抜くためには、十分な資産を確保しなければなりません。
かつての日本では、預貯金から得る金利や、企業からの退職金、そして年金の受給によって老後の生活資金をまかなっていました。
しかし、長引く不況と超低金利時代への突入により、預貯金から得られる利益は減少傾向にあります。
年々退職金の金額も下がってきていますし、年金についても、少子高齢化が著しい日本では制度の破綻が懸念されており、リタイア後の生活に十分な財源の確保は難しいといわれています。
総務省統計局「家計調査年報(2019)」によると、世帯主が60歳以上で無職の世帯(世帯員は2人以上)の家計は可処分所得(収入から税金や保険料を除いた額)が約20万7,000円であるのに対し、支出は約24万円で、1ヵ月当たり約3万3,000円が足りなくなるというデータが出ています。
月々の不足額は約3万3,000円、年間にして約39万6,000円、仮に60歳で定年を迎え、100歳まで生きるとすれば、総額は約1,584万円不足することになります。
では、その不足分はどうやって埋められるのでしょうか。お金の貯め方だけではなく、使い方についても次でご紹介します。
公的年金のみでは生活費が不足する場合、企業から支払われる退職金は不足分をカバーするのに大切なお金です。
厚生労働省の2018年就労条件総合調査を見ると、大卒・大学院卒者の退職金平均支給額は1,788万円となっています。
ただし、退職金は年々減少傾向にあることや、退職金の制度がない会社もあることなどから、誰もが満足のいく老後資金を準備できているとは言えないでしょう。また、退職金が支給されたとしても、住宅ローンの支払いや、急な医療費などが発生することも考えられます。
そこで、このような老後資金の課題に対応するためには、退職金だけに頼るのではなく、お金の貯め方や使い方を変えていかなければなりません。考えられることとして、まず「貯め方」は働いているうちから堅実に預貯金をしておくだけでなく、運用をしながら資産形成をする必要があるでしょう。また「使い方」としては、預貯金から取り崩しながらも資産運用を行い、お金の寿命を延ばすことが重要になります。
資産寿命を延ばすためには「使う」だけでなく、「増やしながら使う」という選択肢を取ることも視野に入れましょう。金融機関では、資産寿命を延ばすための方法として様々な商品をご案内しています。人生100年時代では、自分自身のスキルアップが今以上に必要になり、老後にやらなければならないことが今より増えるかもしれません。そのうえ、資産寿命も伸ばさなければならないとなると、とても大変に感じるかもしれません。
そんな時は、ぜひお近くの金融機関にお問い合わせてみてはいかがでしょうか。身近な銀行なら、お金のことについてトータルでご相談することができます。
人生100年時代を豊かなものにするには、従来のライフプランニングにこだわらず、ライフステージに合った働き方や生き方を選ぶ必要があります。そのためには、自身のスキルを磨くことや健康状態を維持するなど「見えない資産」を大切にしたうえで、更に老後の生活に必要な資金のことも考えなければなりません。
長い人生をより豊かなものにするために、まずは将来を見据えた資産形成を始めてみてはいかがでしょうか。
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